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小さな島から世界に響け:『小さな恋のうた』

国境を越えて仲良くなれたら・・・

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いちゃりばちょーでー。沖縄には、こんな言葉がある。一度出会えば皆兄弟、という意味だ。沖縄の人が優しい笑顔で口にする言葉だが、沖縄の本土や米国との関係・歴史を思うと、少しやり切れない気持ちにもなる。

沖縄は、対照性に溢れた土地だ。息を呑むような美しい自然の中に廻らされたワイヤーフェンス。小鳥がさえずり、ゆったりとした時が流れる中に突然響くヘリコプターの騒音。平和を求めると主張しながらも、不和に支配される人々。善意を無関心さや不正で返す在沖米軍。かつては独自の文化を持つ独立国であった沖縄は、17世紀初頭から第二次世界大戦終戦後アメリカの施政権下に置かれるまで、日本の統治下にあった。沖縄が日本に返還されたのは1972年。今日、沖縄県2281平方キロメートルの面積中には、それが日本国土のたった1%であるにも関わらず、国内米軍基地の7割以上が置かれている。これは、現地住民の生活に対する配慮に欠ける日米間の政治的決断の結果であり、よって米軍基地の存在は多くの住民にとって憂懼の対象、また負担でしかない。

 

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そんな難しい背景はさて置き、『小さな恋のうた』の主人公たち:亮多(佐野勇人)、慎司(眞栄田郷敦)、航太郎(森永悠希)、は音楽に夢中になり、青春を謳歌している才能ある高校生バンド。東京のレーベルからスカウトを受け、将来への希望に胸を膨らませる4人だが、そんなある日、中心メンバーの慎司が米軍のものと見られる車による轢き逃げに遭い、命を落としてしまう。心に深い傷を負ったメンバーたちは、それぞれ喪失と向き合う-大輝は他のバンドに移籍、航太郎は残ったメンバーをまとめることに務め、亮多は友の死に大きなショックを受け心を閉ざす。そんな中、慎司の妹・舞(山田杏奈)が、慎司が制作していたまだタイトルのない曲を見つけ、また慎司がフェンス越しに親しくしていた米軍基地に住む少女リサ(トミコクレア)の存在を知り、バンドの止まっていた歯車が再び動き出すことに。

しかし、周りでは慎司の事件を受け基地に対する抗議が過激化し、主人公の高校生たちは、大人たちが互いに示す拒絶、漂う緊迫感、そして解決することなく新たな世代へと引き継がれる政治問題に支配された世界の中で、行き詰まりとなる。

「外の人は私たちのことを良く思っていないの」と娘の外出を禁じるリサの母親。

「沖縄の人と仲良くなりたくないの?」父親に問うリサ。

リサの家族のような米軍の者にとって、沖縄での暮らしはほんのひと時のことだ。一方、慎司の家族のように在沖米軍によって生涯の傷を負わされたような住人たちは、どうすることもできず、そのまま前へと進まなければならない。しかし慎司の父親は、息子の死を悲嘆しながらも、基地が非難されるべきではないと考える。

「何やってんだよ。基地に向かって怒ってどうなる。」

「怒る相手が違う。」抗議デモのニュースを見ながら慎司の父親は憤る。

作中描かれる、この基地を恨むか恨まないかというジレンマは極めてリアルである。1972年に沖縄が日本に返還されてから2016年までの間、米軍兵士(またはその家族)により引き起こされた航空機関連の事故は709件、強姦、殺人、窃盗を含む犯罪が5,919件、米軍演習による原野火災が602件で38,163,866平方メートルの沖縄の土地が焼失、交通事故は3,613件(1981年以降)、この内1990年以降の事例で、82件が致死的であった。このデータは衝撃的であり、沖縄の人々が今後起こり得る事件に対する不安と共に暮らさねばならないことがよく分かる。

しかし、基地の存在はマイナス要素ばかりだろうか。作中、亮多の母親が営むバーは主に米兵の客で繁盛していたが、慎司の死後、基地からの外出禁止命令が出てからはガラガラになってしまう。また慎司の父親は、基地に勤務し生活のための収入を得ている。そして慎司やリサ、そしてバンドメンバーたちのように、友情や愛情によって境界を乗り越える人々もいる。ということは、永住者にしろ一時居住者にしろ沖縄を「住まい」とする人々は、障壁を取り除くことができるということなのだろうか。沖縄の米軍基地に対する苦難を解消する手段はあるのだろうか。

 

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沖縄出身のパンクロックバンド・モンゴル800(作中にカメオ出演)の曲にインスピレーションを受けた本作『小さな恋のうた』は、そのような議論に対し、ある見解を示唆している。国籍、言語、人種、年齢、その他社会的障害になり得ることに固執し、狭い視野からしか物事を見ない-このような姿勢から脱却できる新しい世代を育てていけば、今日残存する様々な悪虐に別れを告げることができるかもしれない。映画を観ると、そのように思わされる。

日本を離れる際、リサは慎司に教わった言葉、沖縄での思い出の言葉であるいちゃりばちょーでーを使い、手紙で友人たちに別れを告げる。本作の主人公たちのような心によって将来が作られていくとしたら、いつか世界中でよりたくさんの人が「兄弟」「姉妹」となる日が来るのではないだろうか。

(C) 2019 LITTLE LOVE SONG Film Partners

キャスト:佐野勇斗、眞栄田郷敦、山田杏奈
監督:橋本光二郎

*引用::https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/documents/p32.pdf

文:ローズ・ハネダ

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