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『ザ・ファブル』:圧巻のアクションを通して考えるワーク・ライフ・バランス

注意:必ず適度に休んでください。命を落とす恐れがあります。

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「過度な労働が原因の死」を意味する言葉を作らなければならなくなるというのは、深刻なことだ。突然増え始めたこのような死を定義するため、1978年、日本で「過労死」という言葉が作られた時、国はもっと迅速に問題に取り組むべきだった。過労死弁護団全国連絡会によると、1980年代から現在までの過労死による日本人の死亡件数は1万人に及ぶ。これらの悲惨なケースの中には、キャリアの大事な時期をスタートさせたばかりの人が犠牲となったものも含まれる-2017年に大きく報道された、1ヶ月の時間外労働が159時間に上り、休日が2日間しかなく、31歳で心不全で亡くなった記者のケースなどだ。

これらの悲しいデータが示すのは、日本の最大の社会問題の1つ-ワーク・ライフ・バランスの欠如だ。よく知られたことではあるが、日本人は過度な長時間労働を行い、また有給を使い切らないことを、毎年様々な統計が裏付けている。営業時間の削減、夜一定の時間になると自動的にパソコンの電源が落ちるシステム、山の日等新祝日制定など、働く人々に自身のワーク・ライフ・バランスを見直すことを促す様々な方策を政府、民間共に打ち出しているが、成功しているとは言えない。

その点、江口カン監督は2019年公開の映画『ザ・ファブル』を通し、休息を取らないことで訪れる命の危険を訴えることに成功しているかもしれない。

(c)2019 “THE FABLE” Film Partners

岡田准一演じる伝説の殺し屋・ファブルは、ターミネーターのような正確さで建物中に潜む敵を次々と倒し、任務が完了すると何事もなかったかのように武器を処分してボスの元へ戻っていく。殺しの後も会社でのありきたりの1日であったかのように過ごすファブルだが、ある日それが一転する。活動で注目を集め過ぎてしまったことを危惧したボスは、ファブルに1年間大阪で一般人として静かに過ごすよう命じる。もしその間に人を殺したら、その時はファブルも殺される。一般的な労働者になぞらえると、ファブルは仕事を休まないと命を落とすことになると言われているのだ。本作のメインテーマが、ワーク・ライフ・バランスの模索であることが明らかとなる。

終始本名は明かされず、仕事上得たニックネームでのみ知られるファブルは、日本一普通とも言える名前「佐藤明」を名乗り、大阪で普通の人としての生活を始める。「佐藤」は繋がりのあった組織を通して大阪に家を見つけ、小さなデザイン事務所でゆるめな仕事にも就き、最初はなかなかうまく平和な生活を送る。

しかし、ファブルが命令に忠実に一般人として過ごす中、大阪の組織は8年間の刑を終えた小島(柳楽優弥)の出所と向き合わなくてはならなくなっていた。小島は、「仕事」で燃焼し狂気を帯び、残虐なサイコパスと化した人間の一例だ。最後には、彼が変わることはないと判断した小島のボス(ファブルのボスと同様、小島におとなしく過ごすよう話していた)がねじ曲がった「情け」をかけ、小島に向かって銃の引き金を引く。だが本当に小島を殺したのは、休養することを拒んだ彼自身だろう。

(c)2019 “THE FABLE” Film Partners

『ザ・ファブル』は、根底ではダークで暴力的な映画だが、作品のテーマとのバランスを取るためか、コメディータッチで描かれている。そして江口監督作品の魅力はそこだろう。過激な部分に影をひそめながら、誰もが共感できる節度の大切さというメッセージをひっそりと伝える。火花に満ちた映画のフィナーレで、ファブルはデザイン事務所の同僚を助けるため、休業しようとしていた殺し屋モードに立ち戻る。しかしだからと言って、それが引き金となり以前の生活に戻ってしまうわけではない。大阪に残り、焼き魚で舌を火傷するファブルは以前も今も同じ人間だ。

性格が変わったわけでも、人生をかけて培った職・スキルを捨てたわけでもないファブル。彼が見つけたのは別の生きがいであり、それこそが仕事に打ちのめされない生活への第一歩なのだろう。

キャスト:岡田准一、木村文乃、山本美月、福士蒼汰、柳楽優弥、向井理
監督:江口カン

文:ストゥルシェヴィッチ・ツェザーリ

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