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多様性、創造性、大胆さ:映画『21世紀の女の子』を手掛けた15人の女性監督たち

才能あふれる彼女たちが日本の映画史に変化をもたらすまで

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『21世紀の女の子』を観た時、ナンシー・マイヤーズが監督・脚本を務めたコメディー映画『ハート・オブ・ウーマン』(2000)のメル・ギブソン演じる主人公が、女性が本当に望んでいるものを理解しようと、初めてのワックス脱毛を体験し、黒タイツを履き、マスカラを塗るというシーンを思い出し、思わずホッとして笑わずにはいられなかった。ありがたいことに、女性の人生において“野心”はうわべだけのものだと考えられていた時代は過ぎ去ったのだと思った。今日のように複雑でハイペースな社会に生きることで、女性はより洗練された次元のトピックへ挑むようになった。その最大の成果は、女性が自分の才能や野心を探ること、そして“センシティブな話題”について話すことを恐れなくなったことだろう。『21世紀の女の子』こそが、その完璧な例である。

2018年、映画監督の山戸結希は、自ら企画・プロデュースを手がけ同世代の女性監督たちに声を掛け、自己認識や性のあり方をテーマにした短編をそれぞれに制作を依頼し、オムニバス作品にした。

監督たちはオムニバス形式の映画として一つにまとめることができるように、決められたテーマの下で短編映画を制作することになった。その主な目的は、21世紀の女性が大胆で、多様で、創造的であると示すこと、そしてそれを隠さないということ。完成した『21世紀の女の子』は、1980年代または90年代生まれの新進女性監督によって制作された、14本の短編映画と1本のエンドロールのアニメーションで構成されている。人間関係、自己認識、セクシュアリティー、愛、欲望などを探求した映画たちは、作り手である彼女たちのように大胆だ。そんなクリエイターたちをよりよく理解するために、彼女たちのこれまでの活躍を掘り下げながら紹介していきたい。

1.山戸結希

1989年、愛知県生まれ。思春期の少女たちの複雑な感情を描き出すことに定評のある映画監督である。大学在学中に、独学で撮影した短編映画デビュー作『あの娘が海辺で踊ってる』(2012)で注目を浴びる。大学では倫理学を専攻し、哲学の研究者を目指していたが、同デビュー作が高く評価されたことにより映画監督としての道を進む。

2013年、音楽×映画をコンセプトにした映画祭MOOSIC LAB にて、『おとぎ話みたい』がグランプリを受賞。2016年には、菅田将暉と小松菜奈を主演に迎え、自身初となる商業映画『溺れるナイフ』でメガホンを取った。少女漫画原作の同作はヒットを記録。映画の他にも、乃木坂46の「ハルジオンが咲く頃」(2016)、RADWIMPの「光」(2016)、Little Glee Monsterの「はじまりのうた」(2017)といった、日本を代表する音楽グループのミュージックビデオも手掛ける。山戸自らが監督した短編映画『離ればなれの花々へ』を含む、オムニバス映画『21世紀の女の子』を企画・プロデュース。「この作品を観終わったとき、新しい議論と、待ち詫びた希望が生まれるような、未来の女の子たちのためのオムニバス短篇集としたい」と同作について語っていた。最新作は『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019)。

離ればなれの花々へ

『離ればなれの花々へ』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

2.井樫彩

わずか22歳にして有望な映画監督として頭角を現す。井樫の成功は、自主製作への情熱と確かなオリジナリティーによるものだ。北海道で生まれ育ち、東京の東放学園映画専門学校で映画製作を学ぶ。彼女の映画監督としての成功を決定付けた卒業製作映画『溶ける』(2016)では、主人公の少女が従兄弟の思いがけない助けのおかげで変化していくさまを描いた。同作は河瀨直美監督の推薦を受け、2017年にカンヌ国際映画祭にて上映された。

2018年には、初の長編映画『真っ赤な星』が公開。それぞれ心に傷を負っている14歳の少女と27歳の元看護師が一緒に過ごす中でお互いに慰めを見出していくストーリー。彼女のキャリアにさらなる希望を与えた。『21世紀の女の子』では、異性のフリをすることでの自己発見がテーマの『君のシーツ』を監督した。

『君のシーツ』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

3.枝優香

1994年、群馬県生まれ。小さな町で育った枝にとって、映画鑑賞が“唯一の娯楽”だったという。日本映画界で名を知られるようになった彼女は、自らの子ども時代について「映画に限らずテレビとか画面の向こうはずっと気になっていました」と振り返った。監督作『さよならスピカ』が、第26回早稲田映画まつりで観客賞を受賞。その後、自らの青春時代の体験を基にした学校でのいじめや友情関係について描いた初の長編映画『少女邂逅』(2018)を制作(JFF Onlineにて配信)。『21世紀の女の子』では、初めての恋が「乾燥」していく様を描いた一風変わった短編『恋愛乾燥剤』を監督した。

『恋愛乾燥剤』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

4.加藤綾佳

加藤の作品に登場する主要キャラクターたちは、人生に折り合いをつけるために苦戦を強いられている若い女性たちだ。加藤は映画美学校12期フィクションコース修了後、映画とCMの監督としてキャリアをスタートさせた。長編映画デビュー作『おんなのこきらい』(2015)は、瞬く間に映画批評家たちから好評を得た。彼女の最新作『いつも月夜に米の飯』(2018)は、母親の失踪後、レストランで働き始めたことをきっかけに成長していく若い女性の物語だ。『21世紀の女の子』では、ある女性の性感帯についての独特な好奇心を描いた『粘膜』を手掛けた。

『粘膜』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

5.坂本ユカリ

坂本は、山戸結希の監督デビュー作『あの娘が海辺で踊ってる』(2012)で助監督としてのキャリアをスタートした。『21世紀の女の子』に名を連ねている監督たちの中で、大学院にわたってまで映画を勉強した数少ない監督の一人である。彼女が得意とするのは、編集と演出だ。数々の映画コンペティションで賞を受賞後、人気映画『食べる女』でアシスタントプロデューサーを務めた。『21世紀の女の子』では、崩壊した2人の関係を描いた『Reborn』で観客に衝撃を与えた。

『Reborn』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

6.首藤凜

複数の受賞歴を持つ映画監督である首藤は、1995年東京生まれ。彼女の多才なキャリアは、高校時代に初めての映画を撮影したことで始まった。代表作には『また一緒に寝ようね』(2016)、『なっちゃんはまだ新宿』(2017)があり、両作品ともに監督・脚本を担当した。2017年、映画祭MOOSIC LAB にて代表作の一つ『なっちゃんはまだ新宿』が準グランプリを含む3冠に輝いた(JFF Onlineにて配信)。『21世紀の女の子』では、秘められた欲望を探求した『I wanna be your cat』を製作。

『I wanna be your cat』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

7.竹内里紗

すでに8作品以上ものフィルモグラフィーを持つ竹内は、1991年生まれの28歳。日本映画界における新世代の期待の星の一人である。2014年、風変わりなフェチを持つアスリート女子高生を題材にしたデビュー作『みちていく』がいくつかの国内の映画祭コンペティション部門で受賞し、たちまち名声を築いた。映画の勉強を修了させるために大学院へと戻り、『FOLLOW』(2016)や『SYNCHRONIZER』(2017)などさらなる成功を収める映画で、監督・脚本の執筆を担当。『21世紀の女の子』に収められた『Mirror』では、写真家とその元恋人の奇妙な関係を描きあげた。

『Mirror』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

8.夏都愛未

おそらく今回紹介している女性監督の中で唯一、音楽、演技、監督と手を伸ばして活動しており、そのキャリアは彼女の手掛けた映画のテーマのように多様である。夏都は大学で作曲を専攻。数々の映画賞を受賞し、国際的にも高く評価された、三澤拓哉監督の映画『3泊4日、5時の鐘』(2014)で女優デビューを果たす。『21世紀の女の子』の1作として、短編『珊瑚礁』で初めて映画監督を務めた。同作は、短命な桜の季節に恋の三角関係が巻き起こるさまを描写した。彼女の初の長編映画は『浜辺のゲーム』(2019)。

『珊瑚礁』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

9.東佳苗

ファッション業界での経歴を持つ東佳苗は1989年、福岡生まれ。『21世紀の女の子』で彼女が手掛けた短編『Out of Fashion』が、カリスマモデルが人生の岐路に直面するというストーリーであったことにも納得がいく。東の監督としての実力は確かな一方で、やはり最大の強みはファッションとデザインのビジネスに精通している点にあり、その業界で存在感を発揮している。。2009年にファッションブランド「縷縷夢兎」を設立。以降、アートディレクションやコスチュームデザイン、そして役者のスタイリングを行うことで、ファッションと映画に携わってきた。2015年、初の短編映画『Heavy Shabby Girl』を監督し、その後も『THE END OF ANTHEM』(2017)や『My Doll Filter』(2017)を手掛ける。

『Out of Fashion』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

10.ふくだももこ

 映画監督、脚本家、そして小説家であるふくだももこも、一つの方向にとどまることなく様々な作品を生み出してきた、マルチな才能を持つ一人だ。1991年大阪生まれのふくだは、卒業製作映画『グッバイ・マザー』(2013)で映画監督としてのキャリアをスタートさせる。同作は批評家たちから評価され、日本国内における数々の映画祭で上映された。2015年には、短編映画『父の結婚』も同様に高く評価された。2016年に「えん」を執筆し、小説家デビューを飾った。同小説は第40回すばる文学賞佳作を受賞。『21世紀の女の子』で彼女が手掛けた短編は『セフレとセックスレス』。セフレの2人がその関係性の定義づけに苦心する様子を追った作品だ。最新映画である『おいしい家族』(2019)は、母親になることを決意した父親のことを理解しようとする家族の姿を描いた心温まるドラマ。

『セフレとセックスレス』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

11.松本花奈

 女優、監督、脚本家、映画編集者の顔を持つ松本花奈が、映画のキャリアをスタートさせたのは子どもの時であり、早くも中学時代には映画製作を行っていたという。かつて子役として活躍していた松本は、30本以上もの映画やテレビシリーズ、CMやミュージックビデオに出演し、同様に多くの作品で監督も務めてきた。女優として最も印象深い出演作は、ホラー映画『呪怨 黒い少女』(2009)や、遠藤幹大監督の『友達』(2013)など。映画監督デビュー作『真夏の夢』(2014)はティーンエージャーの成長ドラマで、2015年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映され、たちまち好評を博した。翌年には『脱脱脱脱17』(2016)も、複数の賞に輝くなどさらなる成功を収め、彼女の世代で日本を代表する監督の一人として認識されるようになる。『21世紀の女の子』では、突然いなくなってしまった恋人との記憶をノスタルジックに記録した短編『愛はどこにも消えない』を手掛けた。

『愛はどこにも消えない』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

12.安川有果

大阪生まれの安川は、2012年にホラーSFドラマ映画『Dressing Up』で監督デビューを果たす。2015年、同作が第25回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を獲得する。1作目の成功に引き続き、安川はさまざまな作品の製作に取り組んでいる。その大半は短編映画であり、なかでも男性作家と女性写真家が同じミューズをシェアするというストーリーの『ミューズ』が、『21世紀の女の子』の一編となっている。

『ミューズ』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

13.山中瑶子

1997年に長野県で生まれ、厳しい両親にしつけられて育ったため、子ども時代には映画を観ることや、漫画を読むことを禁止されていた。しかし、高校時代に先生から数本の映画を薦められると、彼女はすっかり映画の虜になり、バトミントン部を辞めて映画を観に行くようになった。そのころから、映画製作の道で生計を立てていくことを心に決める。大学では映画コースに入学するものの、卒業前に退学し、1年間を“何もせず”に過ごす。しかし、その1年が自己探求をする時間となっていたことは明白で、彼女のデビュー作『あみこ』の製作のきっかけとなる。同作はPFFアワード2017で観客賞を受賞し、世界中の国際映画祭の数々に招待されるなど、大きな成功をもたらした。そんな彼女が『21世紀の女の子』で発表したのは、山中がかつてアルバイトをしていた実在の中華レストランを舞台に女性たちの様子を描き出した『回転てん子とどりーむ母ちゃん』。

『回転てん子とどりーむ母ちゃん』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

14.金子由里奈

金子由里奈監督は複数の賞に輝き、批評家からも多くの称賛を受けている。1995年東京生まれの彼女は、すばらしいキャリアを持ちながら、驚くことにまだ大学生である。現在は京都を拠点に活動しており、さまざまなミュージックビデオや映画の製作に取り組む一方で、インディペンデントの映画祭の立ち上げや、色々なコンペティションに参加するなど、同世代の若い映画製作者たちにインスピレーションを与える存在でもある。彼女の最新作『眠る虫』(2019)は、映画祭「Moosic Lab 2019」でグランプリに輝いた。『21世紀の女の子』で撮った短編『Projection』は、オーディエンスと役割を入れ替え、金子自身が、いつもと違って「撮られる者」となった作品である。

『Projection』©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

15.玉川桜

『21世紀の女の子』の中で、唯一のアニメ作品を製作したのが、玉川桜だ。1985年、北海道生まれのイラストレーター。より良いキャリアを目指して東京に上京、地元企業で働く傍ら、イラストの執筆を続け、個展を開催していた。『21世紀の女の子』は玉川にとって初めての本格的な作品となった。

©2019「21世紀の女の子」製作委員会 Produced by Ū ki Yamato

感傷的なドラマと説明できない、時に奇妙で感情的なスリルまで、オムニバスとして並べられたこの映画たちを無視することは不可能だ。多くの現代女性たちに関わりのある現実的なトピックを扱っているだけでなく、声明文としての役割も果たす。それは、『21世紀の女の子』の15本の映画に、あるいはその映画の背後にいる監督たちのいずれかに、自分自身の欠片を見出す未来の女性たちに才能を捧げ続けることに対する、声高で明確な熱意の表明だ。

文:ローズハネダ

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