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会話の代わりに『今日も嫌がらせ弁当』

反抗期の娘に作る弁当、継続は力なり

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「みんなで食べるとおいしい」とはよく言ったもので、愛する人や尊敬する人、大切な友人と食べるご飯は、本当に美味しく感じる。また、1日の終わりに笑顔で食卓を囲む家族の光景というのは、何より心温まるものだ。

そんな美味しく食べるのに欠かせなかったスパイスのような大事な人たちが、突然いなくなってしまったらどうだろう。楽しく美味しかった食事が孤独なものに変わり、どんなことを言ってもやってもあの楽しい時間は戻ってこない、そんな時。

失ったものは戻らないと諦め、時に身を任せるのも一つの策だが、そんなシチュエーションに新たなスパイスを加え、変化を引き起こしてみるのもありだ。

塚本連平監督の感動のファミリー・コメディー作『今日も嫌がらせ弁当』で、反抗期に伴い素直さが失われた娘を持つヒロイン、持丸かおりが選ぶのは後者。2つの仕事を掛け持ち、2人の子を持つシングルマザーのかおりは、下の娘、双葉の家での態度に苛立っている。2人の会話はほとんどなく、双葉はほとんどの時間を「無断侵入禁止」と書かれた部屋で過ごしている。高校生にありがち、と笑うかもしれないが、親になったことがあれば(または反抗期の高校生だったことがあるなら)、いくら覚悟しているように思っても、反抗期は互いに堪え難い苦痛の多いライフステージであるということに共感できるだろう。

オープニングのシーンでは、娘の変化を受け入れようと努力するかおりの姿が描かれている。2人の幼い娘たちと手を繋ぎ、晩ご飯は何がいいかと話しながら歩いたあの頃-双葉は「いつもお母さんと一緒にいたい」と笑顔で話していた。それが今では、家事も朝起きるのも母親も、全てが「ウザい」高校生だ。

今でもたった一つこの母娘を繋いでいるのは、毎朝なんとか双葉をベッドから引っ張り出す前にかおりが作る弁当だ。日本の「お弁当」は、朝パッと詰め合わせただけの外国でいう「ランチボックス」とは訳が違う。タコさんウインナー、型抜きされた野菜、文字やキャラクター型に切り抜かれた海苔、キャラクターの髪の毛を表現した麺、ふりかけで彩られたご飯-日本のお弁当は、時間と労力のかかった一種の芸術品であり、単なる昼ご飯ではなく、毎日の作り手の愛情表現なのだ。中でも目を引くのは、小さな子供に人気があり、この映画にも登場するキャラクターをモチーフにした「キャラ弁」。驚くほど工夫が凝らされ、時間をかけて作られたキャラ弁は賞賛に値する。

ある日友人の前で、可愛いキャラクターは苦手、とクールに振る舞う双葉を目撃したかおりは、ある計画を思いつく。双葉が態度を改め、聞く耳を持つようになるまで、持っていくのが恥ずかしいくらい可愛いキャラ弁を作るのだ。

かおりは、翌朝から早速計画を実行するため早朝から起き出し、おとぎ話や人気のキャラクターをモチーフにしたキャラ弁作りを始める。計画初日には、かおりの思惑通り、赤ずきんちゃんキャラ弁で双葉に赤恥をかかせ、別の日には海苔で制作された『リング』に登場する貞子で気味悪がらせる。学校で恥を書くのが嫌な双葉は、普通の高校生らしい弁当に戻すよう要求するが、かおりは双葉が嫌な態度を改めるまで続けると宣言する。双葉は怒って部屋を出るが、かおりは「やっと喋った!」と笑顔だ。

バトルはヒートアップし、かおりが作る弁当はどんどん大胆になっていく。「皿は片せや!」「勉強してる?」「やっぱり無駄なことはない」などのご飯とチーズの上に海苔で書いたメッセージは、弁当箱の蓋を開けるたびに双葉に語りかける。

意外にも双葉は弁当を食べないという反抗はせず、毎日完食してくる。静かなる戦いとして始まった弁当バトルだが、徐々に母娘のコミュニケーションとしてルティーン化し、2人の主人公たちに変化をもたらしていく。

本作『嫌がらせ弁当』は八丈島を舞台に、実在の「かおり」の人気ブログ、またそれが書籍化された同名作に基づいた実話である。高校生の娘との弁当を通したユニークな交流を綴った同ブログは、登場するオリジナリティ溢れる弁当や、映画にも登場する「可愛いけど憎たらしい娘」などの名台詞で反響を呼んだ。同じ問題を抱える親たちは応援のコメントを送ったり、倣ってキャラ弁を作ったりし、「かおり」のクリエイティビティーや努力、そして何より娘への愛情は多くの人に感動を与えた。

実話と同様、映画でも嫌がらせ弁当は双葉が高校に通う3年間続けられる。高校最終日に作った最後の弁当は、大きな弁当箱に入れられた。

「表彰状
娘殿
あなたは
嫌がらせのお弁当を
残さず三年間
食べ続けました。
その忍耐を称え
ここに表彰します。
母」

という言葉と細かい縁取りが切り抜かれた海苔で作られた、卒業証書を模した弁当だ。可愛いウインナーなどのおかずで彩られた弁当は、双葉のクラスメイトからは賞賛を浴び、反抗的な双葉の目にも涙が浮かんだ。弁当を一口ずつ口に運びながら、「ごめんなさい」と言葉が漏れる。

母の深い愛情の物語『嫌がらせ弁当』では、絶望的に思えても子育てを諦めない母の姿が印象に残る。かおりのように、諦めずに何かスパイスを加えて苦難に立ち向かったら、もしかすると不可能も可能に変えることができるかもしれない。

キャスト:篠原涼子(持丸かおり)、芳根京子(持丸双葉)、松井玲奈(持丸若葉)
監督:塚本連平

文:ローズ・ハネダ

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