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『海獣の子供』:美しい映像と感動的なストーリーを通して探求する奥深い観念

万物のつながりを語る渡辺歩監督の大ヒットアニメーション

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「虫や動物も。光るものは見つけてほしいから光るんだよ。」これは、2019年公開アニメーション映画『海獣の子供』の主人公の1人、海の言葉だが、彼は単に生物学的な話をしているのではない。海が言わんとすることは、人間を含む全ての生き物は、同じ宇宙の一部として本能的に、互いに繋がりを探し求めるということだ。複雑なメッセージであり、作中、明確に言い表されているわけではない。はっきりと分かってほしいというよりは、感じ取ってほしいと言わんばかりに、圧倒的に美しい映像に乗せて語られているのだ。

Children of the Sea img1
©2019 Daisuke Igarashi・Shogakukan-“Children of the Sea” Committee

『海獣の子供』は、五十嵐大介作のヒット漫画を原作とした映画。同漫画は、2006年から2011年の間に連載され、日本漫画界のピューリッツァー賞とも言われる手塚治虫文化賞に2回ノミネートされている。原作も映画化版も、夏休みの始めに問題を起こし、部活に出入り禁止となった中学生・琉花の物語。他にすることもなく、父親が務める近所の水族館に出かけた琉花は、そこで不思議な少年・海に出会う。海は、兄の空とともにフィリピンでジュゴンに育てられ、海の生き物と意思疎通できるという特殊な能力を持つ。動物たちとの冒険が始まりそうな予感がするが、映画の主題はそれでもなければ、隕石の落下をはじめとする世界で同時発生する様々な異常事態でも、海の生き物が日本付近に集まる「誕生祭」でもない。これらは全て、全生物同士の深いつながりを語るための要素に過ぎない。

それが示唆されるのは物語の序盤、海と空の兄弟について研究する海洋学者が所有する「Rwa Bhineda」という船が登場するところだ。この船の名前は、相反的であり相関的でもある二つの力がもたらす調和によって世界は保たれているという、インドネシア・バリの哲学的概念で、より広く知られる道教思想の陰陽の考えと似ている。作中でも、煌めく海洋生物が生息する広大な海が、星が輝き無限に広がる空に比較され、2つの全く異なる世界が似ているものであるという描写がある。そしてそれはつまり、深海であれ宇宙空間であれ万物は1つの大きな全体の一部であるということであり、よって大海とそこに生きる生物は、地球外の生命の可能性についてもヒントになり得るという考えだ。

また「海」と「空」という名前からして歴然ではあるが、2人のキャラクターを通してもその観念は表現されている。対照的ではあるが(1人は褐色の肌をした元気な少年、もう1人は静かで白皙の少年)2人は兄弟であり、同じ場所の出身で同じミステリアスな目的を持つ。

Children of the Sea img2
©2019 Daisuke Igarashi・Shogakukan-“Children of the Sea” Committee

宇宙の全てが1つの巨大な生物である一方、個々の生命には無限に広がる世界が宿っている――この映画は、サイケデリックなフィナーレを通じて、そうほのめかしているようである。体内に隕石を宿し誕生祭に到着した琉花は、そこで形や音が溶け合う幻想的で壮大なシンフォニーを目の当たりにする。

ここで、本映画のユニークな作画スタイルが作品をさらなる高みにに引き上げている。非常に細かな手描きのアニメーションと3DCGを織り交ぜたような手法によって、見事な独特の現実味が生み出されており、海-あるいは彼の中で渦巻く無限の銀河によって形成される海の本質を象るもの-の姿が描写される幻想的なフィナーレは、奇怪ではありながらもどこか現実の延長線上のように感じられる。あくまでも、そんな風に感じる、そんな風に見える、ということであり、この超現実的なフィナーレを徹底分析しようとするのは至難の技であるばかりでなく、野暮である。理論的に理解するのではなく、心で感じれば良いのだ。

したがって、最後に琉花が「現実」の世界に戻り、何が起こったのか分からなかったと発言するのも、悲しいことではない。この映画はそういうものであり、少なくとも言葉で語れる答えのようなものはないのだ。時に壮大で時に繊細な久石譲のサウンドトラックとともに、自らの内へと目的地のない詩的な旅に出る。それで十分である。

Children of the Sea img3
©2019 Daisuke Igarashi・Shogakukan-“Children of the Sea” Committee

子役の芦田愛菜、石橋陽彩、浦上晟周に、ベテラン女優の蒼井優、アイドルの稲垣吾郎、ダンサー・俳優の田中泯という豪華キャストに加え、テーマソング『海の幽霊』で米津玄師を迎えた『海獣の子供』。1度と言わず是非何度も繰り返し観て、その奥の深いメッセージを汲み取ってほしい。

キャスト:芦田愛菜、石橋陽彩、浦上晟周
監督:渡辺歩

文:ストゥルシェヴィッチ・ツェザーリ

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