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日本文学を観る:人気の書籍が元となった日本映画6選

漫画の実写化人気が高まっている一方で、当然ながら日本の著名な文学の多くもこれまで映画のコンテンツ資源として映像化されてきた。日本文学に限られたことではないが、長編作品を書く場合、著者は登場人物の人間性を詳細に描写したり、複雑な社会問題に対しての注意深い考察や見解などをありとあらゆる形で表現する。なおさら、行間を読むことが求められる日本語や日本文化を映像化することは、映像制作者にとって頭を悩ませる種の一つかもしれない。そんな中でも、ここでは日本の人気書籍における奥深いニュアンスが映像へと美しく昇華された6つの作品を紹介する。もちろん、原作を読んだことがない人にもぜひ観ていただきたい作品ばかりだ。

1. 舟を編む

作家・三浦しをんによる2011年の同名のベストセラー小説が原作となっているこの物語は、言語の複雑さと豊かさ、そして人間の持つ粘り強さへの称賛を描いた映画である。出版社の営業マンから辞書編集者へと転じた馬締光也の物語を通じて、普段の生活では気付かなかった日本語の難しさ、そして面白さが生き生きと描かれている。24万語にも及ぶ独自の見出しを持つ壮大な辞書を作成するための15年という長い年月の間、光也は友人や同僚からの手助けを受けながら人生の意味を見出した。三浦の小説は発売後間も無く日本で絶大な人気を誇り、今日までに120万部を売り上げた。2012年には日本国内の書店員が選ぶ最も素晴らしい本の賞「本屋大賞」も受賞している。また、英語、イタリア語、ドイツ語へと翻訳もされているだけでなく、2016年にはアニメ化もされた。

キャスト:松田龍平、宮﨑あおい 監督:石井裕也

2. 手紙

犯罪、羞恥心、罪悪感、孤独、許し、そして家族。これらを総合的かつ重ね合うように描くのは、小説や映画という限られたスペースに収めるには大きすぎるテーマかもしれない。しかし、初監督ながら生野慈朗は有名ミステリー作家・東野圭吾の同名小説を、実にうまく表現することに成功した。兄である剛志と弟の直貴は、両親が亡くなった後も仲が良く、お互い助け合って暮らしていた。しかし、その関係を続けることができなってしまう。兄弟のうち1人が正しい理由で間違った選択をしてしまい、運命が2人を罰したのだ。兄は無期懲役となり、弟は兄の間違いが残した物から自身と愛する者を遠ざけようともがく。原作は、毎日新聞社から2003年に出版され、1ヶ月で100万部以上の売り上げ、同社の歴代最も短期間でミリオンセラーを達成した本である。「La Colpa」(罪、過ちの意)のタイトルでイタリア語に翻訳された他、タイ語にも翻訳されている。

キャスト:山田孝之、玉山鉄二 監督:生野慈朗

3. ノルウェーの森

作家・村上春樹が1987年に発表した名作「ノルウェイの森」は、国内のみではなく、世界中で称賛されている作品である。ベトナム系フランス人のトラン・アン・ユンが監督し映画化された本作は、村上の多層的で、細かな意味合いを与えられた物語を可能な限り忠実に表現している。特に、親友を自殺で失った主人公のワタナベのめくるめく感情の描写が秀逸な形で映像化されているのには注目したい。物語は日本で活発に行われていた1960年代の反体制運動を背景に展開していく。原作は英語、フランス語、中国語、韓国語、ベトナム語をはじめ、30ヶ国語以上に翻訳されている。

キャスト:松山ケンイチ、菊地凜子 監督:トラン・アン・ユン

4. 八日目の蝉

このリストの中でおそらく最も複雑かつ入り組んだ物語なのが「八日目の蝉」(2011)である。子どものいない女性・希和子が、絶望の中で間違った選択をしてしまい、不倫相手の男性の赤ん坊を誘拐し、苦しみながらも共に生きていくことを選ぶ。物語は、生みの親の元へと戻り大人へと成長した娘の恵理菜が、不穏なことに彼女自身も既婚男性と関係を持つようになってしまい、もがいている様子へと移る。本作は、子どもができない女性の哀しさ、不倫、若さや美貌など外面ばかりを褒め称える社会性といった日本社会の影の部分に疑問符を投げることとなり、多くの日本人に衝撃を与えた。2007年に出版された角田光代による同名小説は、The Eighth Dayというタイトルで英語に翻訳されただけでなく、フランス語、ベトナム語、そしてイタリア語にも翻訳されている。

キャスト:井上真央、永作博美 監督:成島出

5. 電車男

「電車男」 (2005) は、実際にネット掲示板の2ちゃんねるへの投稿を原作とした現代的なラブストーリーで、特にデジタル世代の若い層の共感が得られた物語として注目を浴びた。物語は、「彼女いない歴=年齢」のアキバ系オタクが電車内で暴れる酔っぱらいから女性を助けるところから始まる。助けたお礼をしてくれた彼女をデートに誘うため、他のネット住人にアドバイスを求める。山田孝之演じる主人公は名前も不明で、最後まで一貫してハンドルネームの「電車男」と呼ばれているところに匿名で行われるオンライン上のやり取りの特徴が表れている。掲示板での投稿がまとめられた本が出版され人気に火がつき、映画化されただけでなく、ドラマや漫画にもなった。本の著者「中野独人」(なか・の・ひとり)は言葉遊びで、電車男を応援する「みんなの中のひとり」を意味する。英語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、イタリア語といった幾つかの言語に翻訳されている。

キャスト:山田孝之、中谷美紀 監督:村上正典

6. 64 ―ロクヨン―前編/後編

「64-ロクヨン―」 は横山秀夫の小説を原作とし、いくつもの賞も受賞している二部構成の犯罪ドラマで、主役の三上義信の捜査活動に焦点を当てたミステリーだ。この物語の「64」とは、日本の昭和64年 (1989) に起きた未解決の誘拐及び殺人事件のことを指す。未解決事件が時効を迎えつつある時、新たに類似事件が発生し、三上はその両方を解決するために奔走する。特筆に値する点として、「このミステリーがすごい!」というミステリー小説向けの賞で堂々の1位に輝いた原作同様、映画でも緊迫感が最後の最後まで途切れない。もちろん、あまり多くは語ることはできないが、原作と映画の結末が一緒かどうかはミステリーだ、とだけ言っておこう。横山の小説は英語、ドイツ語、イタリア語に翻訳されている。

キャスト:佐藤浩市、綾野剛 監督:瀬々敬久

奥深い日本文学を映像に凝縮させることは難しいことである。原作に忠実か、もしくは異なったアプローチをとるかに関わらず、人々を魅了した作品を別のフォーマットで改めて創造するという挑戦は製作者やキャストを奮い立たせ、結果としてより多くの人の心に届く。これらの映画は、日本の文学と映像それぞれが持つ芸術性と技術性を一度に楽しむことができるハイブリッド作品と言えるのではないだろうか。

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