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華やかな西洋風ウェディング、厳かな神前式… 日本のさまざまな結婚式を描いた映画2選

外国からの影響と古くからの伝統という、ふたつの対照的なものが混在している国、日本。また一方で、季節を祝うことを重んじる国でもある。たとえば、12月は一年の終わりを告げる月、4月は桜の開花が命の再生を表す月、5月は暖かな陽気が長い冬眠から動物を目覚めさせ、活発にする月。このように、刻々と流れゆく日々のなか、それぞれの月に大切や役割を持たせている国なのだ。では6月はというと、結婚の誓いを交わす季節と考える人も多いのではないだろうか。

ジューン・ブライド、すなわち6月の花嫁・結婚は、日本が海外から取り入れ、独自の文化と融合させた流行のひとつだ。きっかけは1970年代、当時まだ日本に浸透し始めたばかりで業績不振に苦しんでいた、西洋式の結婚式を取り扱うブライダル業界が、梅雨どきでジメジメしており、祝日もないことで不人気な6月に結婚式を挙げてもらおうと、6月を「ロマンスの月」と銘打ったことだった。それ以来、6月の花嫁になることは、多くの日本人女性が抱く夢となったのである。では、ジューン・ブライドや結婚式を挙げるチャペル、純白のウェディングドレスが日本に入ってくる前はといえば、ほぼすべての結婚式が神社仏閣あるいは自宅にて、特に季節にこだわることなく、親戚や親しい友人の前でのみ執り行われるものだった。現代の日本の結婚事情は恋愛事情と同様に多様化しており、結婚式も伝統を重んじたものから今風のスタイルを取り入れたものまで実にさまざまだ。

以下に紹介するふたつの映画は、いま日本でもっとも人気のある結婚の祝い方を描いたものである。ひとつは、シンデレラにインスパイアされたような華やかな西洋式の結婚式。そしてもうひとつは、新郎新婦ともに着物を身にまとい、ささやくかのごとく静かに執り行われる、何百年と続く伝統的な結婚式だ。

1. 8年越しの花嫁 奇跡の実話(2017年)


西洋式の結婚式が日本で一般化したのは1960年代、ウェディングドレスデザイナーの先駆けである桂由美が、国内初のブライダル店をオープンさせたことがきっかけだ。本や映画に描かれるおとぎ話さながら、ラグジュアリーさとロマンティックさを織り交ぜた空間のなかで自分がお姫様になれる、そんな一場面を再現するのが目的だった。これを見事に描写しているのが映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」。明るく元気いっぱいな麻衣と、シャイで控えめな性格の尚志という、岡山県に住む20代の若いカップルを描いた実話だ。

映画は、ふたりが2007年に初めて婚約したところから、8年後に行われた結婚式までを描いている。結婚式の数か月前、麻衣は記憶が度々途切れる症状に悩まされ始める。気にはなりつつも検査を受けていなかった麻衣だが、ある日ヒステリーを伴う発作を起こし、病院に担ぎ込まれる。そして、その3日後には心臓発作がもとで昏睡状態に。結婚式をキャンセルする尚志だが、麻衣が完全に治り、式を挙げられる日が来ることを信じ続けていた。1年が経ち、快復し始める麻衣。しかし、婚約者である尚志の記憶が抜け落ちてしまっていた。周りから麻衣を忘れて前へ進むことを勧められていた尚志だったが、麻衣を見舞うために病院に通い続け、結婚するという約束を決して諦めようとはしない。すべてのおとぎ話がそうであるように、奇跡は本当に起こり、8年後、ふたりが家族や友人に囲まれてチャペルで結婚の誓いを交わしているシーンが映し出される。観る者の心をほっこりさせ、最終的に涙させる本映画は、おとぎ話を、そして真実の愛をもう一度信じてみようと思わせる作品だ。

本作の結婚式のシーンは、いま日本で行われている西洋式の結婚式の様子を忠実に描いている。このスタイルの式は、(通常の場合は)外国人の聖職者によって執り行われ、新郎新婦がチャペルで “結婚する” ところから始まる。しかし、欧米の多くの国々と異なり、結婚式は象徴的な意味合いが強い。結婚式当日に入籍をするカップルは少なく、実際は式よりも数か月から一年ほど前に役所に婚姻届を提出しているケースがほとんどだからだ。結婚式は通常、式そのものと披露宴という二部制になっており、いずれも分刻みでスケジュールが決められている。パーティーのような騒がしさはほぼ皆無で、ダンスを踊ったり、即興で余興をしたりということもない。

涙なしで「8年越しの花嫁 奇跡の実話」を観られるのならば、作品のいたるところに “典型的な” 西洋式の結婚式のシーンが登場するのに気がつくだろう。アップで見ると、他の国の結婚式と非常に似ていると感じるだろうが、一度カメラが引くと、日本で行われる式が海外のそれとはまったく異なるものだという印象を抱く。愛と命に対して、信じる気持ちを再度持ちたい。そのためのきっかけを探している人に、特におすすめしたい映画だ。

メインキャスト : 佐藤健、土屋太鳳
監督: 瀬々敬久

2.縁〜The Bride of Izumo〜(2016年)

「Enishi: The Bride of Izumo」
©️ENISHI production committee

日本人が大切にしている、家族をはじめとしたさまざまな人々の絆に焦点を当てたヒューマンドラマ、「縁〜The Bride of Izumo〜」。人とのつながりを当たり前のものとして捉えてはいけないということに気づかせてくれる映画で、島根県の出雲大社にて、初となる本格的な映画撮影を行ったことでも話題となった。出雲大社は、縁結びの神様である大国主命をまつっている、日本最古にしてもっとも格式高い神社として知られており、日本全国からカップルが訪れ、結婚とその後の生活について祈りを捧げる神聖な場所である。

映画は、飯塚真紀という若い女性が、鏡に映る自分の姿を見つめているところから始まる。真紀は白無垢と綿帽子という日本の伝統的な衣装を身にまとっており、結婚式が行われる直前だということがわかるシーンとなっている。だが、次に映るのは葬式の一場面。黒い衣装を着て、ひとりで途方に暮れている真紀。6歳のときに両親が亡くなって以来、一緒に暮らしてきた祖母のあきゑが他界したのだ。祖母との思い出以外は何も持っていない真紀が、祖母の遺品を整理し始めたとき、古めかしい箱の中から白無垢とおびただしい数の婚姻届を見つける。婚姻届はほとんどが空欄だったが、夫の欄には「秋国宗一」と書かれていた。それは、真紀が聞いたこともない男の名前だった。


祖母の人生について、そして婚姻届の謎の男について調べるため、生まれ故郷の出雲を訪れた真紀。ここ出雲で、自分の過去と未来について、本当のことを知ることになる。そしてそれは、真紀が、不安な気持ちや自信の無さから故意に先延ばしにしてきた、ある大切な決断を下すことへとつながってゆく。

映画のタイトルでもある「縁」には、どんな困難をも乗り越える、とても強い人間同士のつながり、という意味がある。家族や親と子の間に存在する絆にせよ、恋人や友人同士のつながりにせよ、強い縁で結ばれるということは喜ばしいことであり、また人生の礎を担うものとして日本文化では捉えられている。出雲の美しい風景の中で紡がれる本作品は、人生におけるこのような特別なつながりを大切にすることを説いた映画だ。たとえ物事がうまく進んでいなかったとしても、未来への希望が持てず、すべてどうでもよくなっていたとしても。

映画の最後の10分間は、多くの日本人が好む神前式をじっくり描き出している。西洋の結婚式とはしきたりも格好も祝い方さえも異なる神前式は、神社で行われるのが一般的だ。参列者は新郎新婦の親族とごく親しい友人のみというケースが多く、斎主によって式が執り行われるのを静かに見守る。式はさまざまな儀式から成り立っており、森羅万象に宿る神々の前、そしてお互いの家族と友人の前で夫婦の契りを交わすのが目的だ。

「縁〜The Bride of Izumo〜」は、結婚の誓いや文化的信仰を描いただけの作品ではない。古来から伝わる日本の伝統儀式をはじめ、社会規範や社会的なふるまいなどを美しくまとめ上げて描ききっており、現代社会において、歴史ある文化的信仰をこれからも守っていこうと、観る者に語りかける映画だ。

メインキャスト: 佐々木希、井坂俊哉、平岡祐太
監督: 堀内博志

神前式、チャペルでの誓い、個人で挙げる豪華な式、あるいは役所にて新郎新婦ふたり(と担当職員)のみで行う婚姻届の提出。今回紹介した二本の映画にも描かれているように、日本には結婚を祝う方法が数多くある。おそらく、日本の結婚式と欧米の結婚式のもっとも大きな違いのひとつは、この国ではお祝いが新郎と新婦のためだけにあるということがほとんどないという点だ。ふたりの人間がひとつになるという、この特別な瞬間にいたるまでにお世話になった人々に捧げる式であり、ふたりの愛を皆で分かち合う一種の通過儀礼のようなものなのである。それゆえに、日本の結婚式には、騒がしい宴会や夜通し行われるダンスパーティのような要素がない。別れの涙を見たり、幾度も感謝の言葉が紡がれるのを聞いたりするのだ。教会や神社、あるいは南国のビーチなど、どこで行われていようとも。

訳:佐藤彩

Edited by GPlusMedia

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