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静かな恐怖:海外でリメイクされた日本のホラー映画

海外のリメイク版の原点に帰ってみる

世界におけるホラー映画の高い人気は、人間には「意図的に怖いものを探し出し、自らを恐怖にさらす」という欲求があるだけでなく、そうすることに快感を感じるということを示しているのだろう。この一見変わった行動には、人間が持つ単純な好奇心と未知に対する強い関心が表れていると言える。「未知」はわれわれに警戒心、疑念、恐怖心を持たせる。未知の要素が必然的に多くなる外国のホラー作品は、恐怖が増幅され、更に魅力的に感じられるのかもしれない。

だからといって、日本のホラー映画がなぜ海外でこんなにも人気があるのか特定するのは簡単なことではない。日本のホラー映画の中では、日本社会特有の概念(和を重んじる、出る杭は打たれる、空気を読むなど)に疑問を投げかけるような物語が多い。更に日本のホラー作品に言えることは、超自然現象や、怨霊にハイテクなひねりを加えた描写が特徴的ということだ。このような映画は海外で反響を呼び、Jポップならぬ、Jホラーというジャンルが台頭している。ここに最も有名で評判の高いJホラー3作品を紹介する。

1.呪怨

写真:呪怨 -ザ・ファイナル-

 

人間は“他人を許す”という行為について、全て忘れて前へ進むことに苦労する生き物で、根に持ちやすい傾向があるかもしれない。この“妬み”や“怨念”と呼ばれるコンセプトは、ホラーというジャンルに格好の土壌を与えてくれるだけでなく、国境を越えても分かりやすい設定の一つと言える。

『呪怨』がなぜここまでユニークで迫力のある作品かというと、復讐心に燃えた霊が形にしていく怨念が、人間によるおどろおどろしい行動を原動力としていることだ。男が嫉妬心に狂い、妻の伽倻子とおそらくその息子の俊雄、そして家族で飼っていた猫を自宅で殺したことで恐怖のサイクルが始まる。その家は怨念を吸収・増幅し、殺された者の霊を通じて家に近づく人を次々と犠牲にしていく。犠牲が出るたびに怨念は増幅し、復讐に燃える霊の原動力となる。

アメリカでこの映画をリメイクした際、タイトルは単純にThe Grudgeと訳された。アメリカ人女優のサラ・ミシェル・ゲラーを主役にさせるために設定の微調整や、伽倻子が好きになってしまう外国人の教授が登場するなどの違いはあるものの、『呪怨』に登場する主なテーマや、時系列が前後するストーリーの展開などは日本版と同じだった。また、アメリカ版でもストーリーは日本で起きたことになっており、監督も日本版を作った監督がそのまま起用された。

『呪怨』は日本で既にシリーズ化されていたが、1,000万ドルの予算で作られたThe Grudgeはアメリカでも大ヒットとなり、1.87億ドルの興行収入をもたらした。その後、何本かの続編やタイアップにつながった。

キャスト:平愛梨、佐々木希 、桐山漣 監督: 落合正幸

2.リング

写真:リング

 

何かが、あるいは誰かがどのように恐ろしく、また気味悪いのかを説明するのは難しい。例えば、“格好悪い髪型で、乱れたネグリジェを着て、ゆっくりと歩く10代の女子”と聞いても怖いイメージを抱かないかもしれないが、この描写が当てはまる『リング』の登場人物・貞子は、誰がどう見ても気味が悪い。おそらくどの文化圏でもそのように見られるだろう。

登場人物としての貞子は本作品で最も怖い要素だが、『リング』はモンスターが出てきて人々を脅かすような映画ではない。ストーリーは、超自然的能力を持つ母娘に対する迫害と屈辱、彼女たちの残酷な復讐、そして『呪怨』と同様、過去にあった残虐行為から生まれた怨念が復讐に燃える霊の原動力となるなどの要素が入り組む複雑なものである。だが『呪怨』と違って、『リング』の呪いは、一時期一般的に使われていたビデオテープというテクノロジーを使って時空を超えることができる。簡単に言うと、あるビデオを見るとすぐに奇妙な電話がかかってきて、その7日後、その人は恐怖で歪んだ顔のまま死んでしまうのだ。

ハリウッドのリメイクは、ナオミ・ワッツ主演のThe Ringとなり、ストーリーは日本版をほんの少し変えられただけだ。主に変えられたのは貞子のアメリカ版であるサマラのバックグラウンドについて、彼女の母親について、そしてサマラが殺された理由についてだった。不思議なことに、ビデオの中のサマラがテレビから出てきて、見ている人を襲撃するシーンは、貞子の同様のシーンが日本の観客に与えた衝撃ほど、アメリカのオーディエンスにショックを与えなかった。日本では「ホラーと言えばあのシーン」というぐらいの知名度を得た名シーンもアメリカ版では、怖いシーンのうちの一つという受け止められ方をしただけだった。

日本版の『リング』は海外でも配給され、間違いなく日本のホラー作品の中では最も国際的に成功しているものの一つと言えるだろう。日本でもアメリカでもシリーズ化され、The Ringは、予算が4,800万ドルだったのに対して、2.5億ドルほどの収入を上げた。

キャスト:松嶋奈々子、真田広之、中谷美紀 監督: 中田秀夫

3.着信アリ

写真:着信アリ

 

秋元康原作の小説に基づいて映画化された『着信アリ』も、『リング』のように、近代技術によって超自然的な力が引き出されるホラーの一例である。登場人物は自分がいつどうやって死ぬのか、という予告電話を受けるのだが、その電話をかけてくる人物は未来の自分の場合もある。奇妙なことに、このような電話を受けて死んだ被害者の口からは必ずある色のアメが見つかる。育児放棄、幼児虐待、喘息がこの映画の大きなテーマとして、ストーリーを入り組んだものにしていくが、Jホラーの作品らしくすべての元凶は復讐を目的としている霊であり、特異な方法でその復讐を果たしていく。この映画は一風変わっているかもしれないが、迫力満点なのは間違いない。

アメリカ、イギリス、ドイツ、日本のコラボのもと作られた2008年のリメイクはOne Missed Callというタイトルで、ストーリーが元の日本の作品とほとんど変わらないだけでなく、オリジナルの映像や音響も取り入れている。

日本版でもそうだったように、One Missed Callは映画評論家の間では評判が良くなかった。しかし、日本版が170万ドルの予算で1,600万ドルの収入を上げたのに対して、リメイク版も2,000万ドルの予算で4,500万ドルの収入を上げた。ホラー映画好きは良くご存じだろうが、評論家のホラー映画に対する感想というのはあまり当てにならず、一番大事なのはファンがどう受け止めるか、だ。この映画の場合、ファンは「イエス」を突きつけた形になった。興行収入がはっきりとそれを示している。

キャスト:柴咲コウ、堤真一、吹石一恵、岸谷五朗、石橋蓮司 監督: 三池崇史

一見、ホラー映画が文化や国境を超えて人々を結びつけるという事実は奇妙に映るかもしれない。しかし、よく考えると、これは人間として共通項があるということもまた事実である。同じようなものに対して恐怖を感じるからこそ、深い関係を築けるのであり、もしかしたら、今後、文化や国境を越えて新しいホラー作品を一緒に作っていけるのではないか。この視点で考えると、日本のホラー映画は国際関係と理解を深める良きツールになり得るかもしれない。

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