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観たら絶対に食べたくなる:日本食の世界を描いた映画5選

日本の食文化について語るべきことは無数にある。多様性と味の面で優れているだけでなく、一つ一つの料理にも象徴的な意味合いがあり何とも奥深い。以下に紹介する映画5本は、料理そのものだけでなく、繊細な作り方、食べ方の背景を知る上ですばらしい作品たちである。美しく、そして美味しそうに映し出された料理をいくつも目にするうちに、お腹が空いてくるだろうが、ほんの少し我慢して最後まで読んでいただきたい。

1. あかね空

山本一力の直木賞受賞作を原作としたあかね空(Beyond the Crimson Sky)(2007年公開)は、1700年代半ばの江戸を舞台に、ドラマティックな食の世界を描き出す作品だ。自分の店をもつことを目指し、古都・京都から江戸へやってきた25歳の豆腐店、永吉の物語である。

京都で有名な師匠に技を学んだ永吉は、豆腐の見た目、味、売り方に「京風」の頑固なこだわりがある。しかし、残念ながら、永吉の豆腐は江戸風の豆腐よりも小さくて柔らかいため江戸っ子の口に合わない。同じ食材でも産地によって異なる特徴をもつという、日本の食文化に共通した性格に気づくことができるシーンである。どの地方にも、地元の歴史から生まれたご当地料理がある。他の例を出すとすれば、大阪と広島が有名なお好み焼きだろうか。広島の人に「広島風お好み焼きが好き」とゴマをすったつもりでも、怒られてしまうだろう。

あかね空が教えてくれるのは、日本において豆腐がもつ意義と、豆腐作りのプロセスの重要性だ。永吉の妻、おふみがあるシーンで熱っぽく「豆腐がすべてじゃないのよ!」と語るように。本作を観たことがない人にはぜひ見ていただきたいが、一点ご注意いただきたい。今後、涙なしでは豆腐を食べることができなくなってしまうかもしれないから。

キャスト:内野聖陽、中谷美紀 監督:浜本正機

2. あん

あん(2016年公開)は、加速する食の現代化の中でも世代から世代へ技を伝える必要性を感動的に伝えてくれる人間劇である。孤独などらやき店の店長・千太郎と76歳の女性・徳江の非凡な友情を描く作品だ。地元で人気のどら焼き店の店長をつとめる千太郎は、徳江の助けを得て成功を収めていた— ある事情により、徳江を解雇するまでは。千太郎は、この決断から繁盛店を維持し、幸せな人生を送るうえで大事なことを学ぶ。

どら焼きは丸い生地2枚の間にあん(小豆の甘いペースト)をたっぷりとはさんだ和菓子だ。あん、またはあんこという言葉は、どんな種類のあん(白あん、うぐいすあん、ささげあん)にも使える。その由来は「詰め物」という単語にあり、日本の菓子、和菓子に使う甘みとして大きな役割を果たす。実際には、日本では小豆あんが非常に一般的なため、単にあんと称されている。

あんは、日本の食文化の鍵となる調理に必要な辛抱強さと忍耐を思い起こさせる作品だ。大量生産された市販の缶入りあんを使う千太郎にひどくがっかりした徳江は、本当のあんの作り方を千太郎に教える。心のこもった、時間のかかる方法だ。砂糖を加えてあんを煮立たせるたびに、2時間置いておくよう徳江は千太郎に教える。なぜなら、それは「最初のデートみたいなものだから」。料理人や菓子職人が生涯をかけて仕事に没頭し、技を絶えず磨き続ける日本の食文化をこの上なく適格に表現するたとえである。

キャスト:樹木希林、永瀬正敏 監督:河瀨直美

3. ラーメンより大切なもの~東池袋大勝軒 50年の秘密~

ラーメンより大切なものは、世界に知られるラーメン店店主、山岸一雄の人生と伝説に迫った心に染みるドキュメンタリーだ。東京・東池袋の彼の有名な店、大勝軒の成功に加えて、店主自身の私生活にも深く迫る作品である。

山岸は世界的に「ラーメンの神様」として知られる。ラーメンをつけダレとともに供する伝説のつけ麺を発明したことがその主な理由だ。つけ麺のアイディアは、山岸が17歳の時に、友達が熱い汁物に麺をつけて食べているのを見た時に始めて生まれた。1961年、彼は「特製もりそば」の名でつけ麺を大勝軒のメニューに加えた。新メニューはたちまち大人気となった。毎日、日本中からやってきた人々が山岸のラーメンを味わうために何時間も行列した。レシピを門外不出にする多くの料理人と違い、山岸は多くの弟子や客に喜んで知識を共有し、彼らは大勝軒の名の元に山岸の味を自由に再現した。日本中からファンを集める理由は、こうした山岸の朗らかで気前のいい姿勢だと語る者も多い。現在では、日本各地の大勝軒ののれん分けした店は100軒を超える。

しかし、いつも笑顔の山岸は、見えない大きな痛みをも抱えている。52歳の時にガンで妻を失ってから、山岸はすべてを犠牲にしてラーメン作りに人生を捧げてきた。こうした筋金入りの熱意が災いし、体調は悪化した。にもかかわらず、彼は仕事をやめなかった。この映画は、作品を貫く主要なテーマのひとつとして、こうした辛抱強さが日本の師弟関係に欠くべからざる要素であることを教えてくれる。多くの人々を魅了し続ける彼の人生は、彼を慕うことをやめなかった弟子たちなしでは語れない。映画の題名はこれをよく表したものだ。作品の英語名はThe God of Ramen(ラーメンの神様)ではあるが、日本名を英語に直訳すれば、「ラーメンよりも大切なもの」—すなわち努力、熱意、希望、そして人と人とのつながり、となる。

 キャスト:山岸一雄、谷原章介 監督:印南貴史

4. パパのお弁当は世界一

パパのお弁当は世界一 は、無数の素晴らしい日本のお弁当がテーマの親子のストーリーを描いた作品だ。Twitter上でのつぶやきに始まった心温まる実話に着想を得たもので、シングルファーザーが高校生の娘、みどりにお弁当を作り続けるという彼の決意を描いた作品である。日本のお弁当文化の真髄を教えてくれる映画だが、その本質は食べ物ではなく、愛、友情、コミュニケーションと家族の絆にある。この映画は、2017年9月に開催されたスペインの有名なサン・セバスティアン国際映画祭でCulinary Zinema部門にノミネートされた。

お弁当は、一般的には家庭の女性が夫や子どもに作る、日本を代表するランチである。お弁当箱という箱型の容器に入っていて、美味しく、健康的で目にも楽しめる。お弁当のルールはシンプルなものだ。(パンやパスタに置き換えることもできるが)ご飯は必須で、メインの料理が1品に付け合せが数品。大事なのは彩りだ。キャラ弁(キャラクターを模したお弁当)がまさに良い例である。食べる人を楽しませるために、キャラクターや動物などを模して装飾した料理を詰めた非常に凝ったお弁当だ。その種類にかかわらず、お弁当にはいつでも愛情がこもっていて、手がかかっている。食べ物自体が重要なのではなく、日本のお弁当は人から人への愛と思いやりを現すものなのだ。この映画の中で、みどりの昼食を作ろうとして父がキッチンで見せる奮闘、そして涙と汗は、この概念を鮮やかに描き出す。日本人の毎日の営みを通じて家族の愛を浮き彫りにするものだ。日本では、言葉よりも行動が大事だと考えられている—毎日早起きして、キッチンで奮闘し、特別な人にちゃんと食べさせることは、「愛している」の言葉とまったく同じだ。

キャスト:渡辺俊美、武田玲奈 監督:フカツマサカズ

5. 海のふた

日本の有名作家、よしもとばななの同名小説を原作とした映画、海のふた(2015年公開)は、都会の暮らしに疲れたまりが、静岡県西伊豆の生まれ故郷の小さな町に戻り、子どものころに好きだったかき氷店を開く決意をする物語だ。様々な課題に直面しながらも、まりのかき氷は客の心をつかみ、主人公はそのプロセスを通じて自分自身を見つめ直す。

かき氷は、薄く削った氷の上にシロップや練乳をかけた人気のデザートだ。日本の夏のシンボルであり、暑く、湿気の高い日のお祭や屋台の定番である。まりのかき氷はユニークで、彼女が熱心に手作りする粗糖を始めとする本格的な材料を使ったものだ。彼女の提供するかき氷は2種類だけで、どちらも人工色素は使っていない。

本作はまた、人々が都会へと移り住むことで小さな町を襲う影響を教えてくれる映画である。若者が大都市を離れ、もっとシンプルな暮らしを求めて田舎に移住するという非常にリアルなトレンド、そうした移住に伴う課題に深く迫る内容だ。海のふたのテーマは、変化を受け入れること、そして田舎に戻るのは人生の失敗ではないということにもある。ストレスの多い日本の都会生活と会社人生の中で、本作は日本の若者が直面しているジレンマを描いている。

キャスト:菊池亜希子 監督:豊島圭介

日本の食文化を構成するのが単に寿司やラーメンなどの食べ物だけではないのがお分かりになったと思う。料理にかける思いや人との繋がりも日本の食文化の大切な調味料なのだ。

 

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